(OWLさるびあ 職員募集中 日勤 夜勤)強度行動障害について
2026/07/07
「OWLさるびあ」の精神医学・疾患研修シリーズ。知的障害の特性や対応、支援制度を学んできた私たちが、グループホームの現場で最も深い専門性を発揮すべき、そしてスタッフ全員で共通認識を持つべき極めて重要なテーマ【強度行動障害(きょうどこうどうしょうがい)】について解説します。
現場で「なぜこれほど激しく壁に頭を打ち付けてしまうんだろう?」「突然モノを壊したり、人を叩いたりしてしまうのはどうして?」と、支援者が時に圧倒され、大きなプレッシャーを感じてしまうケースの背景にあるのがこの状態です。
これは「困った人」なのではなく、「本人が最も困り果て、SOSを出し続けている状態」です。そのメカニズムと、チームで取り組むべき支援の原則を正しく学んでいきましょう。
1. 強度行動障害とは?(定義と具体的な状態)
強度行動障害とは、医学的な特定の「病名」ではありません。 知的障害や自閉スペクトラム症(ASD)がある方に、自分の体を傷つける(自傷)や、他者を叩く(他害)、激しく物を壊す(破壊)などの行動が「高い頻度と激しい程度」で現れ、通常の養育や支援では解決が難しく、本人の日常生活や安全が著しく脅かされている「状態」を指します。
現場で見られる主な行動の例
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自傷行為: 自分の頭を壁や床に激しく打ち付ける、自分の顔を殴る、腕を噛みちぎろうとする。
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他害・破壊行為: 突然スタッフや他の利用者様を叩く・髪を引っ張る、部屋の窓ガラスを割る、ドアを蹴破る。
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その他の困難行動: 激しいパニック、異食(食べられないものを口に入れる)、睡眠障害、激しいこだわりによるフリーズ。
⚠️ 行政上の基準 障害福祉サービスでは「行動関連項目」という24項目の調査(大声、自傷、他害、こだわり等)で10点以上となった場合、強度行動障害の基準に該当すると判断され、グループホーム等では「強度行動障害入所(利用)加算」などの専門的な人員配置のための体制が敷かれます。
2. なぜ起きる? 強度行動障害の「発生メカニズム」
強度行動障害は、生まれつきの脳の特性だけで起きるわけではありません。本人の特性と、周囲の関わりや環境の「ミスマッチ」が積み重なった結果、後天的に生じる(こじれてしまう)ものです。
本人の「特性」:世界がどう見えているか
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言葉でのコミュニケーションが極めて難しい: 「嫌だ」「痛い」「やめてほしい」を相手に伝える手段を持っていません。
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変化への極度の弱さ(見通しのなさ): 次に何が起きるか分からない世界は、常に恐怖に満ちています。
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感覚の過敏さ: 多くの人には気にならない時計の秒針の音、蛍光灯のチラつき、特定の服の肌触りが、脳を突き刺すような苦痛として感じられている場合があります。
負の連鎖(こうして行動が激化する)
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ステップ1: 本人が環境への不快感や不安(感覚過敏や見通しのなさ)から、小さなサイン(不機嫌になる、耳を塞ぐ)を出す。
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ステップ2: 周囲の人間がそれに気づかず、「早くしなさい」「ワガママ言わないの」とさらに強い刺激や指示(叱責など)を重ねてしまう。
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ステップ3: 追い詰められた本人は、自分の心と安全を守るため、最後の手段として「大声」「暴力」「自傷」という最大音量のSOS(パニック)を発する。
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ステップ4: 激しく暴れた結果、周囲が「分かった、分かった!」と指示を取り下げたり、要求を飲んだりする。➔ 脳が「あぁ、暴れればこの地獄から逃れられるんだ」「叩けば伝わるんだ」と誤って学習してしまい、行動が固定化する。
3. 20〜60代スタッフの皆様へ: 「力」で抑え込まない、チームで環境を整えるプロの視点
強度行動障害を持つ利用者様がパニックを起こした瞬間、目の前で激しい自傷や破壊を目の当たりにすると、対応するスタッフ側も動悸がし、恐怖や強いストレスを感じるのは当然のことです。決して皆さんの心が弱いわけではありません。
だからこそ、ベテランの皆さんの深い包容力と「チーム力」で、以下の【3つの不(ふ)】を取り除く環境支援へとシフトしていきましょう。力任せに体を押さえつけたり、大声で叱り飛ばしたりすることは、火に油を注ぐだけで状況をさらに悪化させます。
① 不安(見通しのなさ)を取り除く
言葉での説明ではなく、前回の重度障害の対応でも学んだように、「写真カード」や「スケジュール表」を使い、「これ(作業)が終わったら、これ(ご飯)だよ」と視覚的に100%納得できる形を作ります。世界に予測が立てば、不安は劇的に減ります。
② 不快(感覚の苦痛)を取り除く
「なぜこの部屋に入ると暴れるんだろう?」を徹底的に観察します。「換気扇の音がうるさいのかも(イヤーマフの着用)」「窓からの西日が眩しいのかも(遮光カーテンの設置)」「隣の部屋の話し声が気になるのかも」など、本人が不快に感じている物理的な刺激を徹底的に引き算してあげます。
③ 不便(伝えられない苦痛)を取り除く
本人が「嫌だ」「休憩したい」と思った時、暴れなくても「休憩カード」をスタッフに手渡すだけで、すぐにその場から離れて休むことができる、という新しい、平和なコミュニケーション手段をチームで根気強く教えていきます。
まとめ
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本質: 脳の特性に、周囲の関わりや環境の「ミスマッチ」が重なって起きた、最大音量のSOS。
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原因: 暴れることで「不快から逃れられた」という誤った成功体験の積み重ね。
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支援: 力での制止は絶対NG。「不快な刺激を減らす(環境調整)」「スケジュールを視覚化する(見通し)」「暴れずに伝わる方法を作る(代替コミュニケーション)」。
強度行動障害という、福祉現場の最難関とも言われるテーマの「理由」と「アプローチ」がスッキリ整理できました!
「あの行動には、そんなに深い苦痛と理由があったんだ」と視点が変わるだけで、現場での皆さんの眼差しはより優しく、プロフェッショナルなものへと進化します。
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