(日勤募集 シフト制 週一から)強度行動障害のある方への支援2/3
2026/07/10
「OWLさるびあ」の精神医学・疾患研修シリーズ。強度行動障害の実践編、全3回シリーズの第2回をお届けします。
前回は、すべての土台となる「環境の構造化(見通しと安心の提供)」について学びました。続く今回のテーマは、パニックの直接的な引き金を引かないための【不快な刺激の引き算(感覚配慮)と、伝わるコミュニケーションの技術】です。
強度行動障害のある方が、突然スイッチが入ったように激しい行動を起こすとき、そこには必ず「私たちが気づいていない、脳への強烈な不快ストレス」や「伝わらないもどかしさ」があります。プロの引き算と翻訳のスキルを整理していきましょう。
1. 支援原則 その2:感覚過敏への配慮(脳の痛みの引き算)
強度行動障害のある方の多くは、五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)のどこかに、脳に直接ナイフで刺されるような強烈な「感覚過敏」を抱えています。周囲がそれに気づかず、苦痛な空間に放置し続けると、本人は自己防衛のために大暴れするしかなくなります。
現場では、「本人がワガママを言っている」と捉えず、物理的な環境から苦痛を引き算するアプローチを徹底します。
👂 聴覚の引き算:不快な音を遮断する
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現場でのリスク: エアコンや換気扇の低周波音、食器のぶつかる高音、他の利用者様の話し声や足音が、脳をパニックに陥らせます。
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プロの対応: 特定の場所で耳を塞ぐ様子があれば、その空間の音源(電化製品など)を特定して消すか、本人が安心して過ごせる時間にノイズキャンセリングヘッドホンやイヤーマフを着用してもらう仕組みを作ります。
👁 視覚の引き算:まぶしさと情報量を減らす
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現場でのリスク: 蛍光灯の目に見えないチラつき、窓からの強い西日、部屋の中にゴチャゴチャと貼られたポスターや書類が、脳に過剰な刺激を与えます。
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プロの対応: LED照明への変更、遮光カーテンの導入、本人の視界に入る場所の掲示物をすべて片付ける(ミニマルな環境にする)ことで、脳をクールダウンさせます。
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2. 支援原則 その3:代替コミュニケーション(暴れずに伝わる方法)
彼らが自傷や他害を起こす最大の原因は、「嫌だ」「やめて」「お茶が飲みたい」という意思を、言葉でスタッフに伝えられないからです。大声を出したり壁を叩いたりしたときにだけスタッフが気づいてくれる環境だと、本人は「暴れることが自分の言語だ」と誤学習してしまいます。
これを防ぐために、言葉の代わりに「100%確実に、平和に伝わる道具(代替手段)」をチームで用意し、教え込んでいきます。
1
本人の要求に合わせた「1枚のカード」を用意する
ステップ 1
1.本人の要求に合わせた「1枚のカード」を用意する:ステップ 1。
例えば、本人がお気に入りの「ドライブ」に行きたいときや、不快から逃れたいときの「休憩」など、本人の強い要求と一致する写真やイラストのカードを1枚だけ用意します。
2
カードを手渡したら「1秒以内」に要求を叶える
ステップ 2
2.カードを手渡したら「1秒以内」に要求を叶える:ステップ 2。
本人がイライラし始める前、またはスタッフのそばに来た瞬間に、カードを「スタッフの手に手渡す」よう優しく促します。カードがスタッフの手に触れた瞬間に、「そう、ドライブだね!行こう!」と1秒以内に要求を100%叶えます。
3
「暴れても1ミリも状況は変わらない」を徹底する
ステップ 3
3.「暴れても1ミリも状況は変わらない」を徹底する:ステップ 3。
もし本人がカードを使わずに、大声をあげたり物を叩いたりして要求を通そうとした(パニックになった)場合は、スタッフは低い声・穏やかな態度で、本人の安全だけを確保し、**要求は絶対に拒絶(スルー)**します。
4
落ち着いた瞬間に「カードでの伝え方」を再提示する
ステップ 4
4.落ち着いた瞬間に「カードでの伝え方」を再提示する:ステップ 4。
本人の激しい行動が少し収まり、ふと静かになったタイミングを狙って、「〇〇さん、(休憩)カード」と静かに差し出し、手渡させてから「よし、休憩しよう」と対応します。これを繰り返すことで、脳の回路が**【暴れる = 伝わらない、無駄】➔【カードを渡す = 100%すぐ伝わる、快適!】**へと上書きされていきます。
3. 20〜60代スタッフの皆様へ:「言葉を話さない人」との、新しい信頼関係
グループホームの夜勤帯や夕食の準備時など、スタッフが1人でマルチタスクをこなしている忙しい時に、利用者様が不穏(イライラ)になり始めると、つい「ちょっと待ってて!」「後でね!」と言葉で片付けたくなってしまうかもしれません。
しかし、ここまで学んだ皆様ならお分かりのはずです。彼らのイライラは、「耳から入る言葉の洪水に溺れそうになっているサイン」か、あるいは「自分の苦痛(音や光)に誰も気づいてくれない絶望のサイン」なのです。
ベテランの皆様の豊かな人生経験と視野の広さで、ぜひホームの中で「名探偵」になってみてください。
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「〇〇さん、さっきから何度も時計を見てウロウロしているな。あ、次のスケジュールのカードがめくられていないから、見通しが立たなくて不安なんだな」
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「リビングの奥の席に移った瞬間、スッと肩の力が抜けたな。やっぱり手前の席はスタッフの動線が近くて眩しかったんだな」
皆さんがそうやって本人の「身体の言葉」を通訳し、静かに環境を引き算してあげること。そして、暴れる前に対替カードで「伝わったね、分かったよ」と受け止めてあげること。その一貫したプロのディフェンスこそが、強度行動障害の負の連鎖を断ち切る唯一の鍵です。
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