(ベターデイズ合同会社 日勤募集中)意欲・行動の障害「命・食欲・性欲のゆらぎ」
2026/05/25
「OWLさるびあ」の精神医学研修シリーズ。今回は、意欲・行動の障害のなかでも、人間の生命維持に直結する最も原始的で強力な本能、すなわち【命(生への執着)・食欲・性欲のゆらぎ】について学びます。
これらは単なる「体調の良し悪し」や「個人の欲求の強さ」ではなく、精神症状の悪化や脳の機能バランスの崩れをリアルに映し出すバロメーターです。現場での見極めと接遇のマナーを整理しましょう。
1. 3つの欲求における「ゆらぎ」と精神症状
本能のゆらぎは、多くの場合、エネルギーの「枯渇(著しい低下)」か「暴走(異常な亢進)」という極端な形で現れます。
① 命(生への執着)のゆらぎ
生きようとする本能(生の本能)が希薄化し、死へと傾いてしまう状態です。
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希死念慮(きしねんりょ): 具体的な計画はなくても、「消えてしまいたい」「生きていても意味がない」「眠ったまま目が覚めなければいいのに」と漠然と死を願う状態。うつ状態の初期や回復期に強く現れます。
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自殺企図(じさつきと): 実際に自傷行為や命を絶とうとする行動に移ること。
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注意すべきサイン: 依存症の離脱(クラッシュ)時や、大切なものを失った時、あるいは妄想(罪業妄想など)に突き動かされて突発的に起きることがあります。
② 食欲のゆらぎ
食欲をコントロールする脳の間脳(視床下部)や、気分の波が影響を受け、食行動が極端になります。
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食欲不振・拒食: うつ状態の「エネルギー枯渇」や、「毒を入れられている(被害妄想)」「自分には食べる資格がない(罪業妄想)」といった思考の障害が原因で、食事を拒むようになります。
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過食・異食(いしょく): 躁状態の「エネルギー暴走」によるドカ食い、あるいは強いストレスや寂しさを埋めるための過食。認知症や精神症状の進行により、食べ物ではないもの(タバコ、ティッシュ、石鹸など)を口に入れてしまう異食も含まれます。
③ 性欲のゆらぎ
理性を司る前頭葉のブレーキが緩むことや、気分の高揚によって現れます。
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性的逸脱行動(過活動): 躁状態や依存症(特に特定の物質や行動への依存)の経過において、性欲が異常に高まり、他の利用者様やスタッフに対して過剰にスキンシップを求めたり、わいせつな言動を繰り返したりする状態。
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性欲の消失: 反対に、うつ状態や薬物の副作用(抗精神病薬や抗うつ薬など)によって、性的な関心や欲求が完全に消え失せてしまう状態。
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2. 現場での接遇マナー: 尊厳を守り、安全な「枠」を作る
本能にまつわる症状は、利用者様本人にとっても強い「恥の意識」や「自己嫌悪」を伴うことが多いため、スタッフには高い倫理観と冷静な対応が求められます。
◎ 命の訴えへのマナー: 「絶対に否定せず、話を逸らさない」
「死にたい」と打ち明けられた時、慌てて否定したり、お説教をしたりするのはNGです。
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△(NG): 「そんなこと言っちゃダメ」「生きていれば良いことありますよ」
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◎(OWLさるびあ流): 「それほどまでに今、お辛い状態なのですね」「教えてくださってありがとうございます」
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本人の苦しみをそのまま受け止め(受容)、すぐに一人にせず、チームや医療職へ迅速に共有(エスカレーション)します。
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◎ 食欲のトラブルへのマナー: 「背景の理由を探る」
食べない、あるいは食べすぎる行動に対して、頭ごなしに注意してはいけません。
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対応: 食べない時は「味が合わないのか」「噛みにくいのか」「誰かに見られているのが怖いのか」などの背景を観察します。異食のリスクがある場合は、本人の尊厳を傷つけないよう、対象となる物品をあらかじめ視界や手の届かない場所へ「さりげなく片付ける」環境調整を徹底します。
◎ 性的行動へのマナー: 「毅然とした態度と、感情を生まない境界線」
他の利用者様への過剰なアプローチや、スタッフへのセクシャルハラスメントに対しては、曖昧な態度(笑ってごまかすなど)は絶対に避けなければなりません。
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対応: 「〇〇さん、その言葉(行動)は不快に感じますので、やめてください」と、静かですが毅然としたトーン(大人の毅然さ)でその場で伝えます。本人の人格を責めるのではなく、「その行動はOWLさるびあのルールとして認められない」という明確な枠(境界線)を示すことが、本人の身を守ることにも繋がります。
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20〜60代スタッフの皆様へ
食欲、性欲、そして命。これらが揺らいでいる時、利用者様は「自分が自分でなくなっていくような恥ずかしさ」や「コントロールの利かない嵐」のなかにいます。
人生の酸いも甘いも噛み分けてきた皆さまだからこそ、利用者様が本能のゆらぎによって起こしてしまった行動を「見下したり、感情的に軽蔑したりしない」プロの関わりができるはずです。
「OWLさるびあ」のスタッフに求められるのは、彼らがどんなに揺らいでいても、変わらない尊厳を持った一人の人間として扱いながら、同時に安全のための冷徹なルール(枠)を優しく提供することです。皆さんの凛とした佇まいが、ホーム全体の安全と、利用者様の最後のプライドを守る砦になります。
まとめ
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命のゆらぎ: 「死にたい」はSOS。否定せず、孤立させず、即チームで共有。
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食・性欲のゆらぎ: 脳のブレーキやエネルギーの異常。背景を分析する。
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対応: 感情的に叱責せず、本人の自尊心を守りながら「毅然とした境界線」を保つ。
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