(日勤 急募 週一から)精神症状 巣症状
2026/05/29
「OWLさるびあ」の精神医学・脳科学研修シリーズ。精神症状の全8領域を網羅した私たちが、最後に学ぶべき極めて重要なテーマ――それが【巣症状(そうしょうじょう)】です。
これは「こころの病気(機能の乱れ)」というよりも、「脳という物理的な器の、どこか一部が壊れてしまった(器質的障害)ことによって生じるピンポイントの症状」を指します。
現場で「急に言葉が出なくなった」「目の前にあるのに認識できていない」といった変化が起きたとき、それは精神的な問題ではなく、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍、あるいは特定の認知症(前頭側頭型認知症やアルツハイマー病など)によって脳の特定の場所がピンポイントでダメージを受けているサインです。
プロとして見逃してはならない、脳のSOSの形を学びましょう。
1. 巣症状とは?(「全体」ではなく「局所」のバグ)
脳全体の機能が落ちる「意識障害(せん妄など)」や「知能の障害」とは異なり、脳の特定の部位(局所・巣:す)が破壊されることで、その部位が担当していた特殊な機能だけが失われる症状です。
主に大脳皮質の障害によって起こり、以下の「4つのア(A)」が代表例です。
① 失語(Aphasia): 「言葉」の道具が壊れる
喉や舌の麻痺はないのに、脳の言語エリアが傷つくことで、言葉を「話す」「聞く」「読む」「書く」ことができなくなる状態です。
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運動性失語(ブローカ失語): 相手の言うことは理解できるのに、自分が伝えたい言葉がどうしても口から出てこない(前頭葉の障害)。
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感覚性失語(ウェルニッケ失語): 流暢にペラペラと言葉は出ますが、言葉の意味を理解するエリアが壊れているため、言い間違いが多く、こちらの言うことも通じません(側頭葉の障害)。
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② 失認(Agnosia): 「五感」の認識が壊れる
目や耳、皮膚の感覚は正常なのに、それが「何であるか」を脳が正しく認識・判断できなくなる状態です。
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視覚失認: 目の前にある「メガネ」はハッキリ見えているのに、それがメガネという道具であることが分かりません。ただし、手で触らせると「あ、メガネだ」と分かります(後頭葉の障害)。
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相貌(そうぼう)失認: 人の顔の区別がつかなくなり、毎日顔を合わせているスタッフや家族の顔を見ても、誰だか分からなくなります。
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③ 失行(Apraxia): 「身体の使い方」の記憶が壊れる
手足の麻痺や筋力の低下はないのに、服を着る、ハサミを使う、お茶を淹れるといった「日常の見慣れた一連の動作」ができなくなる状態です。
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着衣失行: 上着の袖に足を通そうとしたり、裏返しに着ようとしたりと、服の着方が分からなくなります(頭頂葉の障害)。
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観念運動失行: 「バイバイしてください」と言われても手が振れないのに、誰かが帰るときには無意識に手が振れるといった、意図的な動作の障害です。
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④ 失算(Acalculia)/失書(Agraphia)
数字の概念が分からなくなり簡単な計算ができなくなったり(失算)、文字の形が思い出せなくなって書けなくなったり(失書)する状態です。
2. 現場での接遇マナー: 「できない理由」を脳の地図から理解する
巣症状を抱える利用者様は、「頭では分かっているのに、身体や言葉が思い通りに動かない」という、凄まじいもどかしさと恐怖、プライドの傷つきの中にいます。
◎ 失語へのマナー: 「急かさず、選択肢を用意する」
言葉が出てこない(運動性失語)利用者様に対して、「何が言いたいの?」と問い詰めるのは最も傷つける行為です。
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対応: 本人が言葉を絞り出すのをじっくり待ちます。また、「お茶ですか? お水ですか?」と「はい/いいえ」や2択で答えられる質問(閉じられた質問)に変えることで、言葉が出ないもどかしさを大幅に減らすことができます。
◎ 失行へのマナー: 「さりげなく、最初の動作を手伝う」
服が着られなくて混乱しているとき、頭ごなしに注意したり、すべてを奪ってスタッフが着せたりしてはいけません。
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対応: 「手足の麻痺」ではなく「使い方のド忘れ」です。服の向きを正し、「ここに右手をそっと通してみましょうか」と、動作の最初のきっかけ(スイッチ)だけを優しくサポートすると、その後の動作がスムーズに繋がることがあります。
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3. 🚨 命に関わる「急な巣症状」への即時対応
もし、これまで普通に過ごしていた利用者様が、以下のような症状を「急に(突然)」発症した場合、それは脳卒中(脳梗塞や脳出血)の超緊急サインです。1分1秒を争います。
【脳の緊急事態を見分ける『FAST』サイン】
F(Face・顔):片方の口角が下がり、顔の半分が引きつっている、笑顔を作れない。
A(Arm・腕):両腕を前に上げたとき、片方の腕だけが力なく下がってしまう(麻痺)。
S(Speech・言葉):急にろれつが回らなくなった、言葉が出なくなった、こちらの指示が通じなくなった(巣症状・失語)。
T(Time・時間):これらが1つでもあれば、すぐに救急車を要請する。
20〜60代スタッフの皆様へ
皆さんも、覚えているはずの人の名前が喉まで出かかっているのに思い出せなかったり、スマートフォンのアプリの操作が一瞬分からなくなってイライラしたりした経験があると思います。
巣症状を抱える利用者様は、その何百倍ものレベルで「毎日当たり前にできていた言葉や行動」が、ある日突然、脳のバグによって奪われてしまっている状態です。本人が一番、情けなくて、悔しくて、怖くてたまらないのです。
「OWLさるびあ」のプロフェッショナルとして、彼らの「できない姿」を決して責めず、「言葉にならなくても、伝わっていますよ」「できなくても、あなたの価値は何も変わりませんよ」という圧倒的な安心感で包み込んであげてください。皆さんのその優しい眼差しが、脳の障害によって傷ついた利用者様の心を癒やす、一番の特効薬になります。
まとめ
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巣症状: 脳の一部がピンポイントで壊れたことで、その場所の機能(言葉・動作など)だけが失われる症状。
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4つの症状: 失語(言葉)、失認(認識)、失行(動作)、失算・失書。
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対応: 急な発症は脳卒中を疑い即エスカレーション。日々のケアでは焦らせず、プライドを最優先で守る。
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